再起をかけた70歳の情熱

夢食研社長・阿部雄悦さんは、再起をかけ鳥取でがんばっている方です。新聞記事を目にした時、「このおんちゃんに会いたい!」と私は思ったのです。そして今日ついに鳥取県西伯郡伯耆町までやってきました。

また阿部さんは静かな中に真の強さがある方で、私の父と同世代です。70歳で、見知らぬ土地で再起したそのパワーと人柄は素晴らしいです。津波から再起したきっかけは、パン屋時代からの愛用品である小麦粉を練る機械二台が見つかったこと。その機械も部品を変え修理して、鳥取まで運び、今もしっかり動いています。

f0044846_23252043.jpg実は小3の時に社会科見学で、阿部さんのパン工場『マルユーベーカリー』にお邪魔した事がありました。そして帰り際に、全員にアンパンマンの形をした菓子パンをくださったんです。給食も阿部さんの工場のパンでしたので、まさに地域に密着した町のパン屋さん!当時の女川の子供はみんな阿部さんのパンで育っていたんです。

震災の4ヶ月前。阿部さんは障害者が自立して働けるNPO「きらら女川」をビジネスパートナーの松原さんと共に運営し、「ゆめ工房21」で、かりんとうの生地を作って全国の施設へ卸していました。新しくかりんとうを作る機械を導入したのが12月。また松原さんが女川に事務所を借り、荷物を運び入れたのが3/11の午前中のこと。女川で全てが順調に行くかのように思われた矢先で、津波の悲劇が起こったのでした。
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ストップしてしまえば、全国に二次被害が出てしまう。せっかく働く場所ができた人たちが困ってしまう。そんな思いで4/4に女川を出発し、松原さんの出身地である鳥取へ。なんとか6/1にはかりんとう作り再開にこぎ着けたのでした。

阿部さんが鳥取で再起した裏側で「町を捨てて逃げた」と女川の人に言われるんだ...とボヤいておりました。阿部さんは町を捨てたのではなく、一秒でも早く仕事を再開して、全国のかりんとうを待つ施設の期待に答えたかったのです。

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「新しい事を始めようと思ったら10年かかる。」と阿部さんはおっしゃいました。ということは60歳にして、この事業を温めてきたということになります。新しい事には消極的な田舎町 女川で、まして障害者の自立までを考えた事業を立ち上げるのは容易なことではなかっただろうと思う。「何度もやめようと思ったけど、その度になんとか乗り越えられたんだよな。」

全て飲み込んで行った津波だったが、阿部さんの情熱だけは奪われていなかった。こうして見知らぬ土地で再起できたのだから…。

私が鳥取に来て阿部さんに会えたことで、自分自身も心が救われました。型破りな情熱と世界に目を向けた広い視野は、うちの父に似ていました。あの70過ぎの方のパワーは凄いです。今となっては父の声を聞くことはできません。だから阿部さんとの会話はとても楽しかったです。久しぶりの女川弁を喜んでくれ、津波から逃げる時の話や、再起したきっかけ話など教えて頂きました。ありがとうございました。
by monchicamera | 2011-07-12 22:32
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