ビートルの街Taxco

旅をしていると無条件で「ここが好き!」という街に出会うことがある。

私にとってTaxco(タスコ)という街がそうだった。自分好みの町並みと、自分好みの車ばかりが走っている。

Taxcoはメキシコシティからバスに乗って3時間ほどのゲレロ州に位置する。銀細工の街として栄えたTaxcoには、多くの観光客(ほとんどがアメリカ人のような気がする)が年間を通してやってくる。

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私がこのTaxcoへ行こうと思ったきっかけは、”ビートル”である。カナダで見た旅番組で、旧ビートル(フォルクスワーゲン社)が狭い路地を通り抜け、切り返して登って行く様子が放送されていた。白い壁、茶色の瓦屋根、石畳、ガス灯という、憧れのスペインのような町並みだった。その中を走り抜けて行く白い数台のビートルタクシー。こんな夢みたいな面白い街が存在するなんて!次の旅先はここだ、テレビを前にそう思った。

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メキシコ自体がスペイン領時代の名残があり、Taxcoもその例外ではない。建築様式もアンダルシアのようであったり、パティオ(中庭)があったり。銀山として栄えていた時代があり、暮らしも豊かさが残るどこか優雅で情緒のある街である。私がイメージしていたタコスとマリアッチの典型的なメキシコとは一線を画していた。
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私はとにかくビートルが好きだ。車の歴史を見ても、あれほどデザイン性に優れた車は他にはないだろう。私はそれほどまでにビートルに魅了されていて(とはいえ、車の機能については全く知らないのである)、自分好みの町並みにうじゃうじゃとビートルが走る様が、居ても立っても居られないほどに興奮する素材であったのだ。当時、旧ビートルはメキシコで生産されていたため、ビートルが自然発生的に多かったのだ。

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肝心のビートルは爆音とともにそんなTaxcoの街を走り抜ける。確かに走っている車種はとにかく古い。おんぼろで、ポンコツで、それがここでは”日常”であり、人を乗せるタクシーというのだから驚きだ。あと3年で生産中止(当時)というではないか。あんな狭い車にどうやって人を乗せるかというと、助手席がスポンと外されているのである。さすがメキシコ。こういうところは自由で潔い。そのポンコツっぷりがまた愛くるしいのだ。エンジンを吹かす音は、石畳に反響し、ビートルが通る度に騒音となる。またそのエンジン音がたまらない。車にも表情があるように、エンジンにも表情がある。

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最初に訪れたのが2003年で、そこからこの街に魅了され、毎年のようにTaxcoに通う事になるとは……。旅というのは不思議だ。会いたい人がいるから旅に出るように、私はtaxcoを走るビートルに会いたいがために旅に出ていたのだ。
by monchicamera | 2013-07-03 23:29 |
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