ビートルの街Taxco つづき

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Taxcoは坂の多い街で、迷路のような作りになっている。メルカド(市場)へ一歩足を踏み入れると、そこは日本では見た事のないような”街の台所”であった。中でも私の目をうばったのは、サボテンとカメムシだった。サボテンはなんとなく野菜の一種だろうと検討がつくが、カメムシがわからない。私の故郷では「へっぷり」と呼ぶ。その名の通り「おなら」のニオイのする虫だ。メキシコのカメムシは日本ほど臭う虫ではないらしく、すりつぶしてサルサソースの薬味として使うようだ。日本でも蜂の子を食べたりするが、きっとその昔の食文化の名残で貴重なタンパク源として食べているのだろう。冬になると解禁時期があるあるらしく、家族総出で山へカメムシを獲りにいくらしい。とある民家でご馳走になったが、チレ(唐辛子)の方が強く虫の味があまり感じなかった。独特の苦みがあるように感じるのは「虫を食べている」という意識の問題のような気がした。もう一度食べてみたいか?と聞かれれば、「もういらない」というのが正直なところではある。
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そんな衝撃的な文化を知りつつ、「これがメキシコかぁ!」と夢うつつで歩いていると、メルカドの出口が分からず迷子になった。適当に歩けばどこか見覚えのある通りに出るだろうと思ったのだが、あまりにも疲れすぎていた。ガイドブックの会話集に書いてあった「Donde esta sarida?(出口はどこですか?)」と、勇気を出して市場のおばちゃんに聞いた。すると隣りにいた子供が、教会まで連れて行ってくれた。この街の中心は教会であり、どこを迷って歩いても必ず中心の教会へ出るようになっている。その横を、例のビートルが通り過ぎて行く。
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この街は、迷い込むほどに魅力を増した。自分がまるでドラゴンクエストの中にいるようだった。お腹が空けば、目の前のタコス屋へ入り、とりあえず「Dos tacos, por favor」と言ってみた。正確にいうと、これが私の”初めてのスペイン語”である。ドギマギしながら言ってみた言葉が通じたときの感動ったらありゃしない!

”現地の言葉を話すこと”ーーそれは世界と繋がっているという実感が持てる瞬間だ。

焼きたて削ぎ立ての牛肉があまりにも美味しくて、辞書に載っていた「Que rico!(なんておいしいの!)」という言葉を連発してみた。お店のスタッフはクスクス笑って、お代わりをサービスしてくれた。jamaica(ハマイカ)という謎のピンク色のジュースも勧められて飲んでみた。花の香りのする甘いジュースは、駄菓子屋で飲んだ粉ジュースのような、どこか懐かしい味がした。
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こうしてどんどん旅先で馴染んで行く自分が好きだった。知らない街の、知らない人たち。そこで交わす片言の言葉。メキシコ人の笑顔と優しさと、よくわからない早口な言葉と、都会では味わえない居心地の良さを感じ始めていた。
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2003年11月
by monchicamera | 2013-07-04 13:34 |
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