NHKのハイビジョン特集 「アンデスに響く黒人音楽 南米大陸・ルーツを探す旅」 を観た。2004年のATP賞受賞作品でもある。 とても興味が挽かれるトピックで、ペルーの人気黒人女性シンガーSusana Baca(スサナ・バカ)さんが「自分の音楽のルーツ、人間の魂のルーツはどこから来たのか?」をテーマに、ボリビアやチリを訪れるドキュメンタリー。
----------++------------++-------------++---------++------------- 南米の歴史を辿ると、スペイン人がインディオを滅亡させ、アフリカ大陸から多くの奴隷を連れて来たという事実がある。黒人奴隷はボリビアのポトシ鉄山で強制労働させられ、アンデスの寒さや飢えで死んでいった。自由を奪われ、過酷な労働を強いられながらも、黒人奴隷はリズムを忘れなかった。遺伝子に眠っているリズムが目を覚ますかのように、カホンという楽器(椅子みたいな形をしたパーカッション楽器)を鳴らし、歌い、踊った。 まず、スサナさんはペルーのとある海岸町にたどり着く。奴隷船が漂着した場所だ。彼らはアフリカからの船旅を終えると、地下道を22kmも歩かされ、秘密の地下室に監禁され、オークションにかけられたという。ある者は荘園へ、ある者はポトシ鉄山へ運ばれていった。薄暗い地下室は気味が悪く霊が漂っている感じ。スサナさんは、多くの奴隷たちの魂を感じるらしく、涙を流していた。 次に、彼女はポトシ鉱山を訪れる。炭鉱も同じように、暗く狭くそして地獄のようだった。地元のインディオたちは朝から晩まで炭鉱で働かされた後で村々に帰ることが許されたそうだが、黒人奴隷達は一度入山すると、1ヶ月間は地下に監禁され、地上に出る事はなかったという。「お金で買われた貴重な労働力」なので、インディオ以上に過酷な条件で労働させられた。 人間として扱われていない存在、ただの労働力でしかなかった存在。町にある造幣局には、石畳に梃子の力で動く木柱が立っている。20人の大人で動かす伸銀機があった。地面である石畳は、丸く磨り減っている。石畳が磨り減るほど、歩き回し、労働させられたということを物語っている。悲しくも痛々しい歴史。彼らは標高4000mの鉱山で、何を考え、何を生きたのだろう。スサナさんはポトシ山の上で慰魂歌をささげた。ソウルともつかない、心からの歌。私はブラウン管の向こうの彼女にとても感動した。 ポトシの後は、ボリビア・トカニャにある黒人の村を訪れる。ポトシて強制労働させらせた黒人の子孫が住む村で、インディオや混血は一切いない。ラ・サヤ というリズムとダンスの音楽が語り継がれている。この村の楽団長とスサナさんは初めて会うなり、抱き合って涙を浮かべた。言葉がなくても、共に黒人としての魂が通い合うらしい。「自分達の祖先はアフリカを故郷とし、強制労働させられ、この地で暮らしてきた。心の支えは歌とリズムだけだった…と。 スサナさんは楽団長に質問する。「この歴史に恨みはありますか?」と。彼らは全く恨んではいないと互いに言った。大事なのは、現在でも歌い継がれているリズム。それを子孫に残していくことだという。スサナさんは村人の前で「女性奴隷に捧ぐ慰魂歌」を歌う。村人は集まって、ラ・サヤを披露してくれた。衣装は白シャツ、女性はインディオみたいな白スカート。日本で言う炭鉱節のような歌で、強制労働させられていた苦しみや、心の解放を願う歌などであった。 最後に訪れた先は、銀を運んだ先だというチリ・アリカ。カマローネス地区にある黒人街を訪れる。ここでもスサナさんは、彼らに会うなり涙を流していた。感じるものがあるのだろう。この地区に伝わる伝統音楽を聞かせてもらう。すると、ボリビアのラ・サヤに共通するものがあるではないか。やはりルーツはアフリカ。そして音楽の根底にあるものは、強制労働させられていた苦しみからの解放であった。 番組の終わりは、スサナさんのライブ映像。とても感動的で、彼女の声や表現には悲しみや怒りや慰めが含まれている。ルーツである黒人奴隷の魂を歌を通して伝えている。単一民族の日本人には分かりにくい部分ではあるが、こうした歴史に少しだけ耳を傾けるきっかけになった、スサナさんの歌とこの番組に感謝したい。
by monchicamera
| 2006-03-23 19:48
| 仙台日記
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