女川町立病院の裏からまっすぐ伸びる石段を登ると、女川湾を一望できる熊野神社にたどり着く。神社は町を見守っているかのように、どっしりと建っていて、海上の船からも見える町のシンボルだ。私が子供の頃、祖父母と散歩したり、元旦には家族で元朝参りに行ったりした。
この写真は、仙台に住む孫を連れて、一緒に女川湾を眺めて過ごした時の一枚だ。 女川のどの家族もそうするように、父もこの場所に来て、孫へ「女川の素晴らしさ」を伝えたのだ。 この写真を撮る時、家にいる母へ「熊野神社から写真を撮るから、店の前に出て手を振ってくれ」と父は電話したそうだ。母は目立つようにと白いタオルをめいいっぱい振って合図したそうだ。 今こうしてこの写真を見ると、人口1万人のちっぽけな港町だった女川が、宝石箱のように素晴らしく見える。18歳まで過ごした女川という町に、正直言ってそれほど愛着はなかったものの、心のどこかで女川が好きだった。潮の香り、聞き取りにくいズーズー弁、水産加工場のおばちゃんたちの笑い声。通学路に干してあったシラス(毎回つまみ食いしました、すみません)。 これが郷土愛というものだと初めて気がついた。自分のアイデンティティはすべて女川という町から成り立っていたのだ。3/11のあの津波がなければ、気づく事がなかった。きっと町を離れてしまった人々にとっては、女川の素晴らしさを再認識するキッカケになったはずだ。 そういう意味では、この津波という自然現象に感謝したい。 あまりにも残酷な、負の代償だったけれど…。
by monchicamera
| 2011-04-26 11:37
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