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津波の歴史を知る

津波の歴史を知る_f0044846_14561778.jpg吉村昭著の「三陸海岸 大津波」という本を読んだ。昭和45年に書かれた後、何度か出版されてきた。明治29年(1896年)の大津波、昭和8年(1933年)の大津波、昭和35年(1960年)のチリ津波について詳しく書かれている。明治の津波を体験した方たちの証言もあったり(老人になった2名へ執筆時に取材出来たらしい)、昭和8年の津波は、岩手県田老町の小学生の作文などが紹介され、津波のリアルさ、当時の住民がどのように逃げたのか(逃げれなかったのか)など、細かく書いてある。

もし、この本を知っていたら…、両親を助けられたかもしれない思う。

津波の話というのは、子供のころから良く聞かされていた。
我が家では父方の祖父母は早く亡くなったから、直接聞く事はなかったが、父や父の友人からは聞いていた。しかもそれは「昭和35年のチリ津波」の話に限られていた。「大きく海水が引いてって湾の底が見えたんだよ。魚はピチピチ跳ねていて、魚を捕まえにいって、死んだ人もいるし、逃げたやつもいる。」「俺は電柱に登って眺めていたんだ」「写真館は1階が浸水したけど2階は大丈夫だった。畳を捨てるのがもったいなかったな」「近所の人たちと炊き出しをやって楽しかった」「山側に住む人たちが助けてくれた」。今回の震災と比べると、どこかしら「のんびり」した話である。お笑い話にも感じられる部分があって、子供ながらに近所のおじさんに聞く津波の話が好きだった。

そして、この本を読む事によって1つの確信を持った。自分の両親が逃げれなかった理由が分かったのだ。それは、父の記憶にある津波が「のんびり系津波」だったということだ。父は昭和や明治の津波のような「ゴジラ系津波」を知らなかったのだ!


父の記憶にある津波は、22歳のチリ津波だけだ。実際は聞いた事があったのかもしれないけど、結果的には危機管理には繋がっていなければ意味がない。母に至っては秋田の出身なので津波とは無縁だ。二人が体験した津波というのは、昨年2010年の3月にあったチリ津波(女川で50cm)のみである。これも「のんびり系津波」で、24時間かけて地球の裏側から津波がゆっくりと押し寄せてきた。この時は親戚が集まって一階にあった物をすべて2階やスタジオに半日かけて運び出し浸水をまぬがれた。

が、今回は違う!大きな地震の後、まさか20分で波にのまれるとは想像をしてなかっただろう。本書にも書いてあるが、巨大ゴジラが突然襲って来た感じだ。

悔やんでも悔やみきれないが、ゴジラ系を知っていたら対策がとれたのではないかと思う。色んな津波について知る事がどれほど重要か、改めて災害対策の重要さを認識しないわけにはいかない。

私が女川で暮らした18年間。津波とは無縁だった。もちろん「三陸に津波がくる」ということは女川町民なら誰でも知っている。だが「どのように、どんな時に」来るのかなんて知らなかった。まして「何分以内に、どんな風に逃げればいいのか」なんて私も知らない。明治と昭和の大津波の事を知っていたら、今回のことは予測できていたかもしれないとさえ、この本を読むと思ってしまう。

これは三陸に住むものなら読むべき本ではないかとさえ思った。中学生なら簡単に読める。「情報を知る」という点ではこの本に勝るものはない。「歴史は繰り返される」というが、「自然災害もまた繰り返される」のである(今はあまり考えたくないのだけれど…)。
by monchicamera | 2011-06-08 14:57
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