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アルピニスト野口健さんと出会う

アルピニスト野口健さんと出会う_f0044846_19141813.jpg昨日はアルピニストの野口健さんが来てくれました。私がアシスタントをしていた時、一度お会いしたことがありました。当時26歳の健さんは、エベレストや富士山の清掃活動を行っていて一躍有名になったときでした。端整な顔立ちとその貫禄に圧倒されたせいか、ずいぶん年上に見えました。私が22歳、大学4年の時でした。年もそんなに変わらないのに、世の中を動かしている健さんがカッコ良くみえました。

あれから11年。
健さんが写真展に来てくれました。奇遇にも誕生日が同じで、旅先でふと出会った感覚でした。健さんとの会話で印象に残った事をメモしておきます。


<故郷とは何か…>

外交官だった父とエジプト人の母を持つ健さんは、アメリカ生まれ、日本育ち(4歳から6年間)、そして海外生活が続きます。そんな彼にとって「故郷とは何か?」。答えは「東京」でした。幼少期を過ごした東京が記憶が彼の故郷なのだそうです。日本人の血が半分流れていて、日本で過ごした時期が少なかったのだけれど、「僕の中の故郷は東京」だそうです。
私は「家も親も津波で流されて故郷を失ったような気がした」ことを打ち明けました。すると健さんは「故郷って自分の中でいつまでも変わらないから」と優しく言ってくれた言葉が耳に残りました。


<自然の中で生きること、命をかけて生きること>
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「漁師さんは遭難したり不慮の事故で亡くなる場合もある。女川で生きて行くということは、死ぬ覚悟をもともと持っているかもしれないという気がするんだけど。」
健さん「僕はそう思わないな。例えば、山での死には二通りあって、予測不能の出来事で死んでしまう場合と、ジャッジミスや道具の不備によって招く死がある。」
「無茶をして死んじゃったりということですか?」
健さん「そういう人も少なくない」
「よく『命がけで登山をする』という表現がありますが。健さんはどうですか?」
健さん「僕は命がけという意識はない。綿密な予定と準備をしていけば危険なことは回避できるから。予測不能なことが起きてしまったら仕方無いとは思うけど…。海も同じじゃないかな。」
「海の人も最初から命をかけてるというよりは、安全に漁ができる準備をきちんとして毎日働いている…ということですね。皆が常に死を意識して危険な漁をしているわけじゃないですものね」
健さん「ただ、今回の津波は大きすぎた。予測不能の部分に入るかもしれない」
「今回の女川の人のポートレートを撮影して、インタビューをしていると『津波は仕方がない』という意見が共通してあったんです。」
健さん「その環境でずっと生きていこうというのは、まさに故郷だからなんだよね。」
「故郷だからこそ、その土地を理解して自然と共に生きていく事を意識したいですよね」


そんな感じの会話をしました。
生と死、自然との共存、今の私にとっては身近なテーマです。経験に基づく健さんならではの言葉が私の心に響きました。彼のブログには、最近の活動が書かれております。沖縄戦争で亡くなった方の遺骨収集、福島への視察なども載っています。興味のある方はぜひ読んでみてください。そして感じてください。

またお会い出来る日を楽しみにしております。
by monchicamera | 2011-08-16 19:36
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