8月に我が家も解体されてから、自然と家の前へ足は向かなくなった。満潮時には海水が浸り、そのうち自分の家は深い海の底になってしまうんじゃないかという気さえしてくる。うっすらと緑色の海藻が茂り、稚魚が泳いでいる。それをウミネコが狙いを定め着地する。ここに生活していた気配など何もない。もう自然の一部になってしまったのだ。

女川のシンボルだったマリンパル(茶色の大きな観光施設)もそのうち解体される予定だ。「何をそんなに急ぐのだろう」と、工事用のクレーン車を眺めてはふと思う。
町を数ヶ月ぶりに散歩した。町の中心部はそんなに広くない。知り合いのお店も、友達の家も、みーんな無くなった。そのうち全てのビルが解体されれば目印もなくなるであろう。散歩する人の姿なんてない。声をかけてくれる人もいない。あまりにもの虚しさに、カラスとウミネコに向かって話しかけた。「うちの父さん、母さん見ませんでしたか?」と。

かさ上げした細い道路を忙しそうにダンプカーが往来する。解体したビルの破片を積み上げ、ガタガタと音を立てて進んでいく。土ぼこりが舞い、私の体すれすれにダンプカーが通る。女川原発が建設され始めた、幼稚園の頃を思い出した。写真館の細い角を曲がる魚を積んだトラックに手を振ったりしていたのに、それがいつしか原発を往復するトラックに変わったのを子供ながらに悲しく見つめていたのだ。あれから30年。
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