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大沼英樹さんの「桜」

今日は新宿御苑に「桜」を観に行って来た。咲いている桜ではなく、仙台の写真家が撮った「桜」である。ギャラリーシリウスにて、3月28日まで

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大沼英樹さんの桜には、日本らしい日常が映っている。なにげない田舎の風景にそっと彩りを添えるようにピンク色が美しい。都会に住む私たちにとっては、幼いころの記憶のような、おばあちゃんの家に行ったような、どこか懐かしい日常風景に出会う。

人工物を一切排除したような、いわゆる「風景写真」ではなく、農作業に勤しむ人や通学途中の子供が画面を構成しており、見るものに安らぎと感動を与えてくれる写真群だ。私達の日常の延長線上にある喜びを、美しすぎる桜が代弁しているような気さえしてくるから不思議だ。

一瞬の輝きを逃すまいとする旅人のような目線の中に、その土地の住人のような視線がバランスよく保たれているところに、写真家大沼英樹さんの人柄がよく現れている。

長年かけて撮り溜めた桜写真の数々は、日本の民族文化を伝えるという点についてもとても価値がある。原風景はいつか変化していくものだ。例えば、今回のような震災が町を飲み込めば、そこにあった風景は激変する。津波でなくとも、災害や土地開発によっても見慣れた風景は変わっていく。このことは私自身が故郷を失って初めて気がついたことだ。桜を含めた日常の輝きを写真に収めていく作業は、その町の記録となり歴史となっていく。数年前から大沼さんはそのことに気がつき、全国各地を旅しながら写真で表現しているのだ。

大沼英樹さんの「桜」_f0044846_23313750.jpgこの写真群の中に、太平洋戦争を逃れた桜の写真がいくつかあるが、銃弾の跡が残るビルと桜木の間を子供たちが通り過ぎていくという、ある種ショッキングな一枚がある。歴史を経て、なお桜がたくましく咲いている様子は、私たちが忘れかけている生命の尊さや、時代を経て「変化」と共存して行く人間の姿が表現されているのではないだろうか。

この桜のシリーズには、実は続編がある。津波被災地の桜を撮った「それでも咲いていた千年桜」だ。あの津波にも耐え、強くどっしりと構えた桜の木を前に私たちは何を感じるのだろうか。
この二つのシリーズは写真集になっているが、ぜひ写真展へ足を運び、オリジナルプリントを見て感じて頂きたい。4月21日からは福島テルサ4階ギャラリーで行われる。
by monchicamera | 2012-03-26 23:42
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